【警備会社向け】年末調整の計算処理を楽にする方法
警備会社に限ったことではありませんが、労務担当者にとって、毎年12月は、年末調整に追われる最も忙しい月ではないでしょうか。
通常業務に加えて、書類を準備しなければならず、万が一、記入ミスや提出漏れがあったら大変です。
毎年、同じような作業に追われれば、担当者の働くモチベーションも下がってしまいます。
そこで、今回は警備会社の労務担当者が楽に年末調整の計算処理ができる方法について、くわしく解説します。
年末調整とは
そもそも年末調整とは、企業の給与を支払う部門や担当者が、給与を得ている従業員を対象に、年度末となる12月の給料日に再度計算し、過不足を精算する手続きのことです。
期限は、毎年1月~12月まで、対象は、支払われた給料や賞与などの賃金や源泉徴収した所得税になります。
アメリカやイタリアは自己申告制、イギリスでは都度調整、ドイツでは事後調整制が導入されており、日本のような年末調整が行われている国は、それほど多くありません。
日本では、1年間の所得を確定申告し、所得税を納税することが原則になっています。
しかし、確定申告で1年間の所得税をまとめて支払うことになれば、納税する従業員は、一度に高額を納めなければなりません。
税務署にも、それぞれの納税者に対応できていないという実情があります。
そこで、源泉徴収義務者である給与を支払う企業が税務署に代わり、納税義務のある従業員の給与所得と所得税をまとめて調整する「年末調整」という仕組みが作られました。
警備業界では、警備会社に所属するスタッフや警備員の給与を支払っている担当部門や担当者が、年末調整の手続きをしなければなりません。
スタッフや警備員にとっては、年末調整で1年分の所得税が確定し、わざわざ税務署で申告する必要がなくなるため、とてもありがたい制度です。
年末調整に必要な準備
年末調整にあたっては、警備会社とスタッフや警備員などの従業員、それぞれに準備が必要です。
警備会社とスタッフや警備員とでは、提出する書類が異なります。
それぞれが準備すべき書類について、順を追って説明します。
企業側の準備
年末調整の際、警備会社など、企業側が準備する書類は、下記の4つです。
1.支払調書
2.源泉徴収票
3.法定調書合計表
4.給与支払報告書
支払調書
支払調書は、法定調書と呼ばれている書類の一つです。
警備会社が税務署に提出する義務があり、「1年間に、誰に、どんな内容で、どのくらい支払ったか」について報告するための書類になります。
ちなみに、法定調書とは、所得税法・相続税法・租税特別措置法などによって規定されている書類のことです。
支払調書は、所得税法によって定められている書類の一つになります。
なお、警備会社に限ったことではありませんが、年末調整の際、場合によっては自社以外の支払調書を準備しなければなりません。
具体的には、自社の従業員に支払った給与のほかに、報酬や業務に関連する費用を支払った場合です。
たとえば、弁護士や税理士などの専門家への相談料やライター・デザイナーなどに支払った外注費なども該当します。
また、宣伝広告費や社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬なども対象となりますので、確認しましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票も法定調書の一つで、警備会社が提出しなければなりません。
日本では、源泉徴収票によって、給与や退職手当、公的年金などを支払う人の支払額や源泉徴収した所得税額を証明できます。
源泉徴収票は、警備会社が年末調整の計算を済ませた後に作成する書類で、スタッフ・警備員など従業員全員が対象です。
警備会社の従業員が、1年間に所得した金額や控除する金額の合計と源泉徴収額を全て記載しなければなりません。
紙で提出する場合は、給与支払報告書とセットになった複写式のものが便利です。
ちなみに、源泉徴収票は、従業員用と税務署提出用の2種類あります。
従業員には12月中、税務署には翌年の1月31日までに提出しなければなりません。
法定調書合計表
法定調書合計表は、正式には「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」と呼ばれ、集計期間の対象は、1月1日から12月31日までです。
支払調書と源泉徴収票の合計を記載する書類で、所属するスタッフや警備員が多いほど、書類も作業量も比例して多くなります。
ちなみに、税理士や司法書士などの専門家に報酬を支払っている場合は、源泉徴収の手続きをしているため、この法定調書合計表も提出しなければなりません。
給与支払報告書
給与支払報告書には、警備会社のスタッフ・警備員に支払った給料をまとめた「個人別明細書」と、企業全体の個別明細書をまとめた「総括表」とがあります。
各人ごとに作成・提出しますが、「個人別明細書」の内容は、源泉徴収票と同じですので、給与システムなどで一括作成すると便利です。
従業員側の準備
年末調整の手続きで、警備会社のスタッフや警備員など、従業員側が準備する書類は、下記の3種類です。
1.扶養控除等(異動)申告書
2.基礎控除申告書・兼・配偶者控除等申告書・兼・所得金額調整控除申告書
3.保険料控除申告書・控除証明書
扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告書は、その年の12月31日現在、スタッフや警備員が扶養している親族の情報を記載するための書類です。
この書類は、従業員の家族が下記控除の対象かどうかを確認するものです。
A.配偶者控除
B.障がい者控除
C.寡婦控除
D.ひとり親控除
E.勤労学生控除
このうち、源泉控除対象である配偶者の控除や勤労学生控除、同居していないひとり親控除、障がい者控除の適用を受ける際は、指定された添付書類を別に提出しなければなりません。
基礎控除申告書・兼・配偶者控除等申告書・兼・所得金額調整控除申告書
基礎控除申告書・兼・配偶者控除等申告書・兼・所得金額調整控除申告書を提出すれば、「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」「所得金額調整控除申告書」を全て充当できます。
これまで、基礎控除申告書の控除額は、一律38万円でした。
しかし、2020年の法改正以降は、合計所得金額が2,500万円以下の従業員を対象に、最大48万円まで引き上げられました。
また、所得金額の合計が1,000万円以下の従業員で、その配偶者に48万円~133万円までの所得がある場合は、「配偶者特別控除」の適用が可能です。
保険料控除申告書・控除証明書
保険料控除申告書・控除証明書は、生命保険料や社会保険料、地震保険料、小規模企業共済等掛金などの控除を受ける際に提出する書類になります。
ただし、生命保険料控除の適用を受ける場合は、契約時期が2011年12月31日の前後によって取り扱いが異なるため、注意が必要です。
契約時期をしっかり確認したうえで、一般生命保険・介護医療保険・個人年金保険に分けて書類を作成しましょう。
このほか、新築・増築・マイホームなどの購入時に住宅ローンを利用していれば、条件によって、住宅借入等特別控除申告書、融資額残高証明書、年末残高等証明書等などの書類を提出することで控除を受けられます。
警備会社の年末調整での悩み
警備業界の雇用形態や労働形態を鑑みると、警備会社ならではの年末調整での悩みもあるでしょう。
警備員は、幅広い年齢層の人が求職する可能性の高い仕事で、正社員のほか、契約社員、パート、アルバイトなど、さまざまな労働形態の警備員が存在します。
年末調整の対象は、警備会社に所属するスタッフ・警備員のうち、労働基準法で定められる労働時間やそれに準ずる時間の就労があり、保険に加入している人です。
つまり、警備会社に所属するスタッフ・警備員のうち、正社員や契約社員が対象となります。
警備会社にとって、大勢の警備員を雇用形態によって分別し、さらに、自社スタッフとともに扶養や住宅ローン利用の有無をチェックし、年末調整の書類を作成することは容易ではないでしょう。
そんな警備会社が、年末調整の手続きを行う際の悩みは、主に4つあります。
必要書類が揃わない
警備会社が年末調整を手続きする際の悩みの一つは、必要書類が揃わないことです。
特に、警備員の場合は、高齢者や外国人、日本語が得意でない人もいるかもしれません。
年末調整に必要な書類について説明しても、よく理解してもらえず、期限ギリギリになっても書類を提出してもらえないこともあるでしょう。
特に、年末調整に必要な扶養控除等(異動)申告書は、結婚や配偶者との死別、障がいを負うなど、環境に大きな変化があった場合も提出しなければなりません。
スタッフや警備員などの従業員が、婚姻届や死亡届などの手続きやイベントに追われ、年末調整の必要書類が後回しになる可能性もあります。
また、昨年まで必要なかった書類を新たに提出する場合は、失念してしまっている従業員もいるかもしれません。
年末調整に関する業務の中でも、期限までに必要書類を揃えることは、警備会社にとって簡単ではないでしょう。
計算が複雑
計算が複雑なことも、警備会社の労務担当者が年末調整を手続きする際の悩みの一つです。
警備会社には、自社スタッフと警備員という2種類の従業員が存在します。
そのなかには正社員、契約社員、外国人、シニアスタッフ、学校を卒業したての新入社員や、中途採用で入社したという従業員もいることでしょう。
結婚や出産を機に警備会社に就職した人、前職から数ヶ月のブランクがあって再就職した人もいるかもしれません。
従業員ごとに、さまざまな事情や環境で条件が異なれば、警備会社が手続きする年末調整の計算は非常に複雑になります。
記入ミスでのやり直し
警備会社の労務担当者が、年末調整を手続きする際の悩みには、記入ミスでのやり直しもあります。
年末調整で必要な書類は、ふだんあまり耳慣れない言葉で書かれた公的機関のものです。
スタッフや警備員などの各従業員に書類を配付し、警備会社の労働者が記入の仕方をきちんと説明しても、記入ミスでやり直しとなるケースもあるでしょう。
税務署に提出する正式な書類ですので、記入ミスがあれば、年末調整までに書き直して再提出してもらわなければなりません。
また、記入ミスが1回とは限りませんし、複数の従業員が記入ミスをすることも考えられます。
年末調整の書類提出期限が迫ってくれば、警備会社の労務担当者は、気が気ではなくなるでしょう。
税務署への報告書類作成が大変
税務署への報告書類作成が大変なのも、警備会社の労務担当者が年末調整を手続きする際の悩みの一つです。
税務署に提出する書類は、多岐にわたります。
ようやく年末調整に必要書類を集め終わっても、警備会社の労務担当者は、翌年の1月末までにそれらを基に報告書を作成して提出しなければなりません。
12月から翌年の1月にかけて、警備会社の労務担当者は報告書類作成業務に追われてしまいます。
「GUARD EXPRESS」で年末調整をラクに!
警備会社の年末調整をラクにするなら、「GUARD EXPRESS」がおすすめです。
「GUARD EXPRESS」は、警備業に特化した管理システムで、警備業に関連する基幹業務を一括して管理できます。
本システムを導入すれば、社会保険・労働保険・年末調整などの計算も迅速に処理できるので、警備会社の労務担当者にかかる業務は、ずっとラクになるでしょう。
本システムは、令和3年度に保険料が変更された社会保険にも対応しており、定時決定や随時決定についても、改訂後の金額で自動集計することが可能です。
給与データから算出された結果から改定の要否を自動的に表示できるため、算定基礎届や月額変更届けなどの書類も簡単に作成できます。
警備業は、警備会社と顧客が関連する業務、顧客と警備員が関連する業務、警備会社と警備員が関連する業務、三者が一連で関連する業務など、多岐にわたります。
そこで、下記の3つのシステムをあわせて導入いただくと、3者の各業務を連動させ、より汎用性を拡大することが可能です。
・警備員向け「NEO」
・クライアント向け「PARTNER」
・新規応募者採用向け「ENTRY」
特に、年末調整手続きでは、本システムと警備員向け「NEO」を連動させれば、警備員が年末調整を申請したり、源泉徴収票や扶養控除申告書を照会したりできるようになります。
連動機能によって、警備会社の労務担当者を悩ませていた、書類の記入ミスや必要書類が揃わないなどの悩みも解消されるでしょう。
まとめ
企業は必ず1年に一度、年末調整手続きをすることが必要です。
多様な人が働く警備会社においては、システムを導入することで労務担当者の業務を効率化することができます。
警備会社の年末調整手続きでお悩みの際は、3者間の連動業務を効率化できるエスアイシステムの「GUARD EXPRESS」を導入されてはいかがでしょうか。